デザインの首都へようこそ。

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8月ももう終盤、ロンドンはすっかり秋めいてきましたね。 デザイン界では4月がミラノなら9月はロンドン。 9月はロンドンで一大デザイン祭りが開かれる月で、世界中から人が訪れる時期です。 多くの催し物が一般公開されているので、今年は読者の皆さんも計画を立てて頂こうと早めにご紹介します。

9月のデザイン祭りを総合してLondon Design Festivalと呼び今年は9月15日(土)から23日(日)にわたってロンドン市内の各地で、クリエイティブ事務所・メーカー・ショップがオフィス・工房を一般にオープンし、屋外では大規模なデザイン・インスタ レーションが行われ、クリエイティブたちによる各種セミナー・パネルディスカッションが行われ、さまざまな展示会にバイヤーが集います。
2012年、ニューヨーク・タイムズにこう言わせたロンドン

悪いな、ミラノ・東京。 残念だったね、ストックホルム・パリ。 アインドホーベン・ベルリン・バルセロナ・・・そして特にニューヨークよ、許しておくれ。
だけどロンドンこそが世界のデザインの首都だ。(NY Times – Planting the Flag より)

ldf_logo街中が右のロゴで溢れ、観光客でも気軽に立ち入ることができるのですが、見どころが多いので、ざっくりと全体の概要をご説明します。

Open House London 2018(9月22ー23日)
正確にはロンドン・デザイン・フェスティバルの一部ではないのですが、デザイン・フェスティバル中の週末2日間にかけて行われます。

建築を理解する最良の方法は体験すること

というコンセプトのもと、普段は一般公開されていない市内800ヵ所の建築が一般公開されます。 大規模な修復工事が始まる前の旧バタシー発電所、首相官邸(ダウニング街10番地)など毎年、あっと驚くような建築物が一般公開されるので、心待ちにしているファンも多い大人気イベント。 ロンドンのアイコン的な建築物のひとつ旧バタシー発電所の内部を修復前にひと目見ようと市民2万人が並んだのは記憶に新しい・・・

今年は事前申し込みが必要な建物はもうほとんど満席となっていますが、当日に並ぶことで入れる建築がほとんどなのでおススメです。 地図と連動しているアプリを事前に携帯にダウンロードしておくと便利です。

Landmark Projects
街のあちらこちらのパブリックスペースに展示されるランドマーク・プロジェクト。 気鋭の建築家やデザイナーを招聘して時事問題や環境問題など現代が抱え る問題をテーマにクリエイトされたインスタレーションが展示されるコンセプト・プロジェクトです。 旬のクリエイターが新しいマテリアルをどう使うか、現 代の問題にどう向かうか、など思考のプロセスを見られるのが楽しい知的刺激が得られます。

V&A博物館
フェスティバルのハブ博物館はアートやデザインにおいて世界最高峰の博物館のひとつヴィクトリア&アルバート(V&A)博物館です。 常設展示の 質と量も比類なきものですが、いつも特別展がすごいです。 フェスティバル期間中はヴィクトリア時代の荘厳な建築の展示室の中で、これまた気鋭のデザイ ナーがインスタレーションを行います。 こちらもコンセプチュアル(概念)な展示が多いですが、世界最高峰のアート・デザインを見せる展示室というコンテ クスト(文脈)の中でコンテンポラリー・アートを見せるという、上記、屋外で行われるランドマーク・プロジェクトとはまた違った文脈を提起してくれます。

各種展示会
フェスティバル期間中、各種展示会に業界人が集結します。 一般が入れる展示会も多いので、興味がある展示会は覗いてみることをお勧めします。 トレンドがいち早く出てくるのはもちろんのこと、セミナーやワークショップが多く行われ、インスピレーションが得られます。
開催日程順から、高級インテリア商材を扱うDecorex(9月16 – 19日)、高級インテリアデザイン系ショールームが集合するデザインセンターで行われるFocus/18(9月16 – 19日)、来場者数最大、イギリス国外の展示者が多いコンテンポラリー・デザインの100% design(9月19 – 22日)、キングス・クロス再開発地区という新しい再開発地区で行われる、ロンドンらしいエッジーなコンテンポラリー・デザインのプロダクトが中心のdesign junction(9月20 – 23日)、若手デザイナーの登竜門であるTentとグローバル・ブランドのSuper Londonという2つの展示会が合体したLondon Design Fair(9月20 – 23日)です。 私は毎年全部行きますが、ロンドンっぽさと言えばdesign junction、若手が出てくる場を見たいのであればLondon Design Fair、ザ・ラグジュアリーであればDecorexがお勧め。

Design Districts
東京もそうだと思いますが、ロンドンが面白いのはエリアごとの個性がはっきりしているところ。 デザインの首都と言われる大都会ならではで、都心から離れ 郊外に行くと金太郎飴化しているのは、どこの先進国も同じです。 プライベート・エクイティ(PE)や法律事務所のオフィス、高級レストランなどが集まる Mayfairと、もともとカリブ系黒人が多く治安の悪さで知られ80年代には有名な暴動が起こったBrixtonでは、そこに集まる人もオフィスを構え る会社も全くタイプが異なります。 デザイン・フェスティバル期間中は、各エリアごとにデザイン系オフィス・ショップ・飲食店などがスペースを開放したり ワークショップを開催したりイベントを行ったりするので、異なるエリアの面白さが直に体験できるようになっています。
このDesign Districtsは参加地区が微妙に毎年変わるのですが、お近くのエリアを覗いてみるもよし、普段行かないエリアを覗いてみるもよし。

London Design Biennale

テムズ河沿いの美しいネオ・クラシカル建築のサマセット・ハウスでフェスティバル期間よりも長く開催される。 おそらくヴィネチア・ビエンナーレ的な立ち位置を目指してい るのだと思われるコンセプチュアルなインスタレーションを集めたのが特徴で今年のテーマは「Emotional States」(感情の状態)です。 コンセプチュアルな展示をたくさん回ると普段使わない脳の一部を刺激できるようで脳へのビタミン剤になります。

すごいボリュームになってしまいました。 私はフェスティバル期間中は毎日どこかに出かけていると思います。 見かけた方はぜひお声がけください!

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About Author

建築インテリアデザイン事務所 Yoko Kloeden Design 経営。 大学卒業後、総合商社や電機メーカーで海外を飛び回るバリキャリ生活を10年した後、夫婦でロンドンに移住、在英8年。 長い海外出張生活で経験した個性のかけらもないアパートやホテル、味気ない空港ラウンジに、空間がいかに人間の心に影響を与えているかに気づく。ロンドン到着後、猫も杓子も家の改装をする文化に衝撃を受け、建築インテリアデザインを学校で学び直す。 ロンドン内のデザイン事務所で修業した後、独立。現在は、南西ロンドンのスタジオで主に個人住宅や商業施設の改装案件を手掛ける。| Instagram @yokokloedendesign | 個人ブログ:https://blog.ladolcevita.jp/

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