第126話 Boiled fruit cake/ Yorkshire fruit cake ~ボイルドフルーツケーキ/ヨークシャーフルーツケーキ~

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okashi


<Boiled fruit cake/ Yorkshire tea loaf/Yorkshire fruit cake ボイルドフルーツケーキ/ヨークシャーティーローフ/ヨークシャーフルーツケーキ>

「Boiled fruit cake(ボイルドフルーツケーキ)」~茹でケーキ?なんだかあまり美味しそうな響きではありませんが、これも実にイギリス的な例のドライフルーツぎっしりの「フルーツケーキ」の一種。「ボイルド」と言っても、いつぞやご紹介した昔のスポテッドディックのようにお湯にドボンとつけて本当に茹でてしまうわけではありません。お鍋にドライフルーツとお砂糖、お水(または牛乳)やバターなどの材料を入れてボイルして作るから、ボイルドフルーツケーキという名前なのです。お鍋の中身の粗熱がとれたら、お次はそこに卵や小麦粉を入れればもう生地は完成。お鍋と木のスプーンがあればできてしまう、超お手軽2ステップフルーツケーキ。室温にもどしたバターにお砂糖をすり混ぜて~、あら、気をつけていたはずなのに卵を入れたら分離しちゃった~なんて心配はゼロ。頑張って混ぜすぎて腕が筋肉痛になることもありません。このボイルドケーキ、その簡単さから、今の時期になると別の名で呼ばれることも。その名も「Last minute Christmas cake」。ふと気がつくと12月ももう半ば。今からでは熟成させなくてはいけないクリスマスケーキクリスマスプディングを作るにはもう間に合わない!こんな時の救世主、今からでも間に合うクリスマスケーキ~としてよく紹介されているのでした。確かに丸型で焼いて、マジパンとシュガーペーストでコーティングすれば充分に役割は果たせそう。

イギリスで教えてもらったボイルドフルーツケーキ、あまりの簡単さにびっくり☆

イギリスで教えてもらったボイルドフルーツケーキ、あまりの簡単さにびっくり☆

さて、ボイルドケーキの作り方を見て思い出すのはウエールズのバラブリス。あれは、ドライフルーツを紅茶に漬け込んでおいて、そこにどんどん他の材料を混ぜていくという作り方でしたね。このボイルドフルーツケーキでもお水や牛乳の代わりに紅茶を使う人もいます。そうすると、「Yorkshire tea loaf(ヨークシャーティーローフ)」「Yorkshire brack(ヨークシャーブラック)」と呼ばれるものに近づいていきます。それらは場所が変わるとただシンプルに「fruit teabread(フルーツティーブレッド)」と呼ばれることも。ちなみにボイルドフルーツケーキと、他のヨークシャーティーローフ・ブラック・バラブリスなどとの違いは、前者はバターやマーガリンなどの油脂類と、卵が1~2個入る割合リッチな配合。後者は油脂分は入らず、卵も大抵1個だけのリーンな配合で少し弾力のある食感、という点。そしてケーキ自体があっさりしている分、バターをたっぷり塗って食べることが多いというのも特徴です。とは言え、名前もレシピも明確な決まりや線引きはないので、一概にそうとばかりも言いきれないのではありますが。

ヨークシャーフルーツケーキに添えられるチーズの厚さはお店によりけり。。。

ヨークシャーフルーツケーキに添えられるチーズの厚さはお店によりけり。。。

ついでにいくつか紛らわしい名前のものをあげてしまうと~「ヨークシャーフルーツケーキ」なるものもあります。こちらも前もってドライフルーツを紅茶に漬けておきますが、ケーキの生地自体はいつものフルーツケーキのように、バターにお砂糖、卵と順にすり混ぜていき、最後に粉類とその紅茶漬けのフルーツを混ぜ込むという作り方。つまり、いつものフルーツケーキの紅茶漬けフルーツ入りバージョンということ。このヨークシャーフルーツケーキをヨークシャーのティールームなどでお願いすると、同じ地方の名物であるウエンズリーデイルチーズが添えられてくることがよくあります。ウエンズリーデイルチーズは、白いほろっとした食感の癖のない優しい味のチーズ。塩分も少なく軽い酸味があるので、重いドライフルーツのケーキと一緒に食べると、濃厚な甘さのケーキを程よく緩和し、なかなかのコンビネーション。一口食べれば、チーズを添えるなんてよりヘビーになるのじゃないかという心配を払拭してくれます。そして「ヨークシャーティーケーキ」。こちらは以前ご紹介した横半分にスライスし、トーストしてバターを塗って食べる丸いレーズンパンのような、あのティーケーキのヨークシャー版。これは一般的なティーケーキとそう変わらないような。。

ヨークシャーブラックとヨークシャーティーケーキ☆

ヨークシャーブラックとヨークシャーティーケーキ☆

最後にもうひとつだけ。先ほど名前がちらりと登場した「Yorkshire brack(ヨークシャーブラック)」。私はこれをしばらく勝手に、ブラックティーにドライフルーツを漬けておくからそういう名前なのだろうと思い込んでいたのです。が、実はスペルをよく見るとBlack(黒)ではなく、「brack」。全然違うではないですか。思い込みとは怖いもの。答えは これと同じ名前を持つアイルランド地方のケーキ「Barm brack(バーンブラック)」にあったのですが、こちらについては長くなりそうなのでまた次回に~。

 

 

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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